1.モチベーションへの理解

神経を細胞や分子レベルで紐解く「神経科学」と呼ばれる研究分野があります。この研究が進むにつれ、「モチベーション」という漠然としたものへの理解が深まってきました。但し、脳の中にある「モチベーション」に関わる分野だけを見るのではなく、相互作用し合うシステム全体を見ることが「モチベーション」を解明するために重要です。

同じ職場で働く仲間や部下の「モチベーション」を考える際には、その定義を見直すことで対策やコミュニケーションの取り方が変わってくるでしょう。

(ある時は)「やるべきことはやっているが、やる気が無いように見える」

(ある時は)「やるべきことにも消極的で、逃げているように見える」

(ある時は)「新しいことを求めてチャレンジをしている」

「見え方」はその時々で異なりますが、これはモチベーションが感情の一つであるという前提を持つことが重要です。

DNAレベル、体験による記憶、脳の配線が異なるため、他者と自分のモチベーションのあり方は大きな違いがある可能性が高いという点も重要な観点です。

営業がうまくいかない社員Aにあるアプローチを働きかけたところ一時的に「モチベーション」を高めることができたとします。今回うまくいったアプローチと同様のものを他の場面や状況、他の社員に働きかけても、今回と同じようなモチベーションの高まりが期待できるとは限りません。

2.モチベーションの振り返り

同じ職場で働く仲間や部下のモチベーションを整理することは、上司の重要な役割です。

具体的な整理の仕方として「振り返り」が挙げられます。振り返る際には、「実際の出来事+その時に何を感じたか+どう感じたか」を言語化して書き留めること、そしてこれを何度も継続することで脳内に記憶として残りやすくなります。

<振り返りの仕方>

・ファクト+何を感じたか+どう感じたかを書き留める

・何度も経験して、記憶が強く痕跡化されるステップを踏む

・価値として記憶化して瞬時の意思決定を導く

この「振り返り」により、本人と上司が「モチベーション」を共有して、個別に最適な働きかけができるようになるでしょう。

3.メタ認知とモチベーション

自ら積極的に行動を起こしてメラメラと燃えている状態を「モチベーションが高い」と一般的に解釈され、上司はその状態を皆に求めがちですが、「モチベーション」は一定のものではありません。

大人もこどもも「興味や関心の高いこと」が原動力となります。いわゆる「好奇心ドリブン」な状態であることが望ましいのですが、仕事等で関わる業務が本人の興味や関心の対象外であることも多いでしょう。

状況などにより刻々と変化するモチベーションを管理するのではなく、理解するという視点を上司が持つことで、仲間や部下は、まず自分の感情や感覚に注意を向けて客観的に自分を理解することができるようになります。

これを「メタ認知」といいます。「自分の認知(考える・感じる・記憶する・判断する等)活動を客観的にとらえること」です。

自分自身を客観的に見ることにより、自分自身をコントロールすることができ、冷静な判断や行動ができる能力までを含めて「メタ認知能力」と呼ばれています。

上司のサポートを得ながら、自身の「メタ認知能力」が高まることで、これまで以上にモチベーションへの理解も深まり、組織全体のパフォーマンスが向上することでしょう。

<参照>
『BRAIN DRIVEN』(青砥瑞人 著 ディスカバー・トゥエンティワン)