1.個への対応

日常的な部下育成や研修などを通して人の教育に関わる方にとって、組織・チーム全体のパフォーマンス向上を図るうえで「個への対応」はひとつのキーワードとなるでしょう。「1on1ミーティング」がいたるところで実践されていることからも「個への対応」は今後重要性を増すばかりです。

因みに、「1on1ミーティング」とは、上司と部下が1対1で行う対話・面談のことです。国内では、2012年からヤフー株式会社が開始しています。

しかし形式的な1on1では効果が期待されません。というのも、マンツーマンで仕事の進捗を上司から詰められるだけといった事例が頻発しており、1on1に否定的な声もあるようです。上司は個別に適切な導きを図る必要があります。

職場で働く仲間や部下を理解するためには、一人ひとりの特性や個性を把握することが重要です。厚生労働省は2015年より事業者にストレスチェックの実施を義務付けています。このようなプライバシーにかかわるデリケートな情報を保有しながら個別にアプローチをして、一人ひとりの、ひいては組織・チーム全体のパフォーマンスを高める努力が企業には求められます。

2.個別に最適な学び

さて、こどもの教育現場においては文部科学省が「個別に最適な学び」を打ち出しています。いまや多くの中学生や高校生は、膨大な学習履歴のデータからAIが一人ひとりのつまずきに合う問題により個別に最適な学びに取り組んでいます。しかし、これは受験という一定のパターンに沿う条件下においては効果を発揮する可能性がある一方、人間には(脳の)個性があり、メンタルヘルスや環境要因によっても学習効果は左右されます。

就学前や就学前後のこどもの場合は、AIによるパターン学習的な要素が機能しにくい一面があり、また学習につまずきや困難を抱える児童の数が爆発的に増えています。このような事実の背景には様々な要因があり、デリケートな問題でもあるためここで安易に語ることは避けたいと思いますが、このような教育現場での困りごとをサポートする事業者が増えており、どの事業者も基本的には「個別に対応すること」を原則として運営しています。学習塾におけるトレンドは、従来型の一斉指導から個別指導へと移り変わっています。

3.脳の個性を測る取り組み

わたしたちが事務局を務めている一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会では、こどもの脳の個性を把握するためにワーキングメモリに特化したアセスメントHUCRoW(フクロウ)を実施しており、全国から多くの受検希望者からお問い合わせをいただいています。

「HUCRoW」とは広島大学大学院教授で一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会代表理事の湯澤正通先生が開発したアセスメントです。このアセスメントにより、一人ひとり異なる脳の個性を先生や保護者が理解して日々の関わりを見直す取り組みが広がっています。

HUCRoWは、15歳のデータをもとに大人の脳の個性を測定することもできるため、受検を希望される方も増えています。

大人においては、職場において書類を同じ場所に保管することができない人、資料を図説することが苦手な人、指示を適切に聞き取って行動できない人、すぐに忘れる人などがいると周囲からネガティブな感情が沸き上がり、職場の空気が重たくなるといったケースが散見されるようです。

「個性」を把握して理解することから教育が始まる、という視点を周囲が持ち、関係性が良好になることもあるでしょう。これは、こどもの脳の個性を測り、講師が日々の関わりを見直すという動きが活発化していることと同様です。

4.一人ひとりへの理解を

上司のサポートにより、メンバー一人ひとりが自分を客観視して理解すること(「メタ認知」といいます)、そして定点観測のツールが社内にあればそれらをフル活用してモニタリングするなど、コミュニケーションの優先順位を高めることが重要です。

グローバル化や多様な価値観を受け入れることが企業の存続の条件となる時代にあり、多くの人と関わりながら企業価値の向上を図る方にとっては、「個への対応」と寛容さが今まで以上に求められています。また、脳科学や科学技術の発展に伴い、これまでは経験則に頼ってきた「個の理解」がより解像度を上げて深まる環境も整いつつあります。ぜひ、最新の情報も取り入れながら、より良い環境作りを実現されることを願っています。

参照:
厚生労働省ストレスチェック🔗
HUCRoW🔗