1.学習の仕組み

医学者、解剖学者の養老孟司先生は学習の仕組みとして下記のサイクルを提示しています。

①「入力(インプット)」は五感から
② 脳を中心とする身体全体が処理
③「出力(アウトプット)」は運動で
「運動」とは、手を動かすなど脳からの命令・指示により促される行動のことです。
③から①のサイクルを繰り返すことが「学習の仕組み」であるということです。

知識(インプット)や情報の量はアウトプットの量に影響をします。インプットの量が多いとその分アウトプットできる量も増えます。

しかし、知識や情報をインプットするだけで止めてしまうと学習とは言えません。

より高いパフォーマンスを発揮するにあたり以下が欠かせません。

・インプットした情報を脳内で情報を処理して運動(行動、アウトプット)すること

・運動することから得られた学びを新たな知識として獲得すること

2.こどもの学習

こどもたちを例にすると、知識として語彙を持っていても、活用となると手が止まるこどもを数多く見てきました。

ことばや語彙の知識は「知っていること(知識の量)」と「それらを使えること(活用)」の両方を身につけることの重要性は文部科学省の学習指導要領にも書かれています。

参照:読解の強化書(「ことば・語彙」方針・指針・考え方)🔗

3.大人の学習設計

大人は、積み上げた経験の量が豊富であるため、脳の長期記憶にはこどもより多くの情報が蓄えられていますが、それらを引き出す機会が少ない場合はエビングハウスの忘却曲線で示されているように時間の経過とともに記憶から消えていく可能性が高まり、せっかくの学びが生かされないケースもあります。

研修を提供する人は、インプットからアウトプットまでを設計に組み込むことで、学習者の実践的な学びを提供することにつながるでしょう。

また、学習者は、新しいことを学ぶ際に知識をインプットすると同時に復習の際にはアウトプットを意識すると良いでしょう。

一例として、他人にわかりやすく説明ができるかということを復習の際に取り入れるとより効果的に身につけることができるでしょう。

因みに、長期記憶に蓄えられた知識や情報を引き出す際にも脳のワーキングメモリが大きく関わっています。ワーキングメモリを使うことが習慣化されていると、情報をより引き出しやすくなります。

『Appleのデジタル教育』(かんき出版)から引用をします。

『2014年、スタンフォード大学医学部で、年齢が異なる子どもの算数問題の解き方に関する調査が実施されました。すると、小学校低学年の解き方は、小学校高学年やティーン(13歳~19歳)、成人の解き方とかなり違うことが明らかになりました。

(中略)

「ネイチャー・ニューロサイエンス」誌に掲載された調査によると、ティーン未満の子どもが問題を解こうとするとき、使用されるのはほぼ脳の【海馬と前頭前皮質】(短期記憶やワーキングメモリを司る)のみで、ティーンや成人になると【新皮質】(長期記憶を司る)と呼ばれる部位に頼るようになります。つまり、年齢の低い子どもは、頼りにできる長期記憶の数が少ないため、指で数えるなど使えるものは何でも使って問題を解こうとするのです。

子どもの年齢が上がって記憶の数が増えるにつれ、検索できる記憶の幅が広がります。人は年を重ねるにつれて、意識的にせよそうでないにせよ、経験を通じて絶えず新しいことを

学習しています。そして、経験と経験につながりを見いだす力も向上していきます。

(中略)

脳は絶えず、新たな情報とつなげられる記憶を探し求めているので、探せる記憶の数が増えるほど、新たな問題に関連付けたり、新たなアイデアを理解したりするのが容易になる。

私たちはこうした「関連づけできる記憶」を通じてものごとを理解しようとします。』

『Appleのデジタル教育』(かんき出版)

教育関係者にとっての示唆として、生徒に未知の何かを教える最善の方法は、生徒が既に知っていることと関連づけることであり、学習が個別最適化される必要がある、と締めくくられています。

個別最適化とは、一人ひとりの能力に適した指導を図ることです。

対象がこどもであれ大人であれ、人の教育に関わる方にとって「インプットとアウトプット」を設計に組み込んだ研修や教材開発を通して学習者のパフォーマンスが高まることが成果といえるのではないでしょうか。

参照:【養老孟司】最新科学の「学習の仕組み」【生涯学習】